ロンドン通信

英語が堪能な未経験者 VS 英語が不十分な経験者-ロンドン通信vol.4-

突然ですが、質問です。あなたの右腕として働いてほしいスタッフを募集する場合、
[1] 日本語が堪能だけれども、キャリアが不十分な外国人
[2] 日本語に相当に難があるものの、募集要件のキャリアがある外国人
どちらを採用されますか?

私は[1]。仕事の意思疎通に重要な「言葉」に難がある場合、仮にキャリアがあってもそれが活かされるまでに相当な時間がかかると考えるからです。

しかし、結果的に私は[2](英語に難あり・募集要件のキャリアはある日本人)として採用されました。しかし、私が受け取った契約は、求人票に記載のあった「無期限」ではなく「3ヶ月の有期(3ヶ月の試用期間でなく、3ヶ月で雇用終了)」…

ロンドンでの仕事探し

ロンドンでの仕事探しは、私の知る限り、次の3つが主な手段です。
(1) 人材紹介会社経由
(2) 日本人コミュニティサイトや掲示板の利用
(3) 企業に直接応募
応募企業を特定できない場合には、(1)または(2)が一般的かと思われます。しかし、私が見た(2)では怪しげな仕事の掲載も散見されたため、私は(1)のみ利用しました。
ロンドンには、日本人向けの人材紹介会社が複数社あり、サービス内容も日本とほぼ同様です。英語のCV(注)を登録から採用決定まで、人材紹介会社とのやり取りはすべて日本語で可能。候補者は無償でサービスを享受できます。
(注)イギリスでは、履歴書をCV(=Curriculum Vitae・ラテン語)といいます(アメリカではresumeというようです)

CV登録から面談まで

日本と同じように、CV登録後はキャリアコンサルタントから案件紹介のメールが届き、関心ある求人にCV提出を依頼します。
私は10社にCVを提出、面談に進んだのは3社でした。

面談

現在の職場(英系法律事務所)の選考が進んだ結果、他社の面談は受けず終いとなりました。1社面談の経験のみですが、ご参考に紹介いたします。

提示された面談候補日は、恐ろしいほど直近・選択肢はほぼなし。
「明日の16時で良いですか?」
という感じ。イギリスでは2~3週間で採用が決定することが一般的と聞いて、納得のスケジュール感。

一次面接:弁護士2名と面談(日本語・30分)
二次面接:人事1名・弁護士1名と面談(英語・60分)
三次面接:弁護士2名と面談・筆記試験(英語・120分)

「最終選考までの残り面談数」は示されず、三次面接の後に内定通知をいただいて「ああ、あれが最終面談だったのね」と分かりました。

一次面接

弁護士からの事務所紹介が中心で、和気あいあいとやり取りして終了。日本の転職面談と変わるところなし。

二次面接

・仕事をする上で大事だと思うものを上から5つ挙げてください
・「今日中に」と指示された仕事が多すぎて、すべてを今日中に終わらせられない場合、どのように行動しますか?
など、「仕事をすること」に関する具体的な質問が矢継ぎ早に。
質問のほとんどを聞き取れず、何度も聞き返してみたり、てんでトンチンカンな回答をしてみたり…恐らく、通常は30分で終わるであろう面談が、60分かかってようやく終了。

英語ができないとはすなわち、「私が何者であるかを伝えられない」こと。辛さ、悔しさ、悲しさ、切なさ…自分を表現できないこととはこんなに苦しいものかと初めて知りました。

(人生においてこれほど落ち込む日もないと思い、「記念日」として、帰宅したところを息子に撮影してもらいました)

しかし思いもよらず数日後に、(相変わらず直近かつ選択肢のない)三次面談候補日が示されます。

三次面接

・パナソニックでの法務経験を簡潔に述べてください
・事務所にどう貢献できますか?
など、日本の転職面談とほぼ同じ内容。英語が比較的聞き取りやすく感じたのは、二次面接が酷すぎて単に開き直っていただけかもしれません。

続いて筆記試験。日本のSPIのような適性試験でなく、「翻訳」テストで、日本語→英語・英語→日本語の両スキルが問われるものです。
話す・聞くより読む・書くはなんとかなるかと思っていたのに、想像以上の不出来で撃沈。

採用

ところが、約10日後、まさかの「採用」連絡。
ただし、平たく言えば、私の採用は、ハイドパークのこのリスのような、「明らかに落ちかかっているが一時的にギリギリなんとかなっている」状態。かなり崖っぷち。

採用条件

ネックは私の英語力。募集要項に記載されていた内容から、あらゆる条件が引き下げられての採用です。一例を挙げると

これが現実。たかが英語、されど英語。
パナソニック時代、上司から何度も何度も言われた「英語できないのは致命的」という言葉。今なお終身雇用の根強い日本企業に居ては、頭でわかってはいても、実行するのが難しい。
そうして、ダイエット同様、先延ばしにした結果はこれ。

私は本当に働けるのか?

いざ採用が決まってみると、「嬉しい!楽しみ!頑張ろう!」という気持ちより「私なんかが大丈夫だろうか」という不安でいっぱい。ここまで押しなべて条件を下げられるというのは、事務所から歓迎されていないことの証左にも思われ、時間が経つにつれ自信が揺らぎ…

二人の私が闘争。

前向きな私
・語学学校であれほど「イギリス英語」に飢えていたのだから、この上ない機会だ!
・キャリア積んで給料いただきながら、語学も学べるなんて、最高の環境に違いない!
・ロンドンで働けるなんて、夢のようじゃないか!

後ろ向きな私
・英語が不十分な私なんて、足手まといではないだろうか?
・私の採用が決まるまで、事務所内でかなりいろいろあったと聞いている…私は全く歓迎されていないのではないか?
・そもそも人生初の転職、ちゃんと仕事していけるだろうか?

一人でがっぷり四つに組み、何一つ心の整理がつかない私を支援してくれたのは家族でした。


「やった後悔より、やらない後悔の方が大きいよ。とりあえずやってみたら?」

息子
「お母さん、平日仕事しなかったらどうせ『あー、また私ばっかり家事させられて(どうのこうの)』って文句言うでしょ?働いたほうがいいんじゃない?」

そんな二人の言葉に背中を押され、未だ不安な気持ちは拭えぬものの、英系法律事務所に足を踏み入れる決意が固まりました。

署名

ドキドキしながら、英文雇用契約に人生初署名。

(4月10日でなく10月4日。イギリス英語はdd/mm/yy、日本と真逆!)

渡英して1か月半、10月7日からいよいよ勤務開始です。


【筆者プロフィール】

小根森純子。大学卒業後、松下電器産業(現パナソニック)入社。ロンドン転勤の夫に帯同するため、2019年8月退社。同年10月より英系法律事務所にて勤務開始。
TOEIC790点。二技能かつ選択問題のためそれなりの点数に見えなくもないが、実力的には600点程度と予想。仮に四技能の試験になれば恐らく400点程度。聞く・話すが極めて苦手。
夫・息子(14歳)との三人暮らし。家族・友人・旅行・グルメが大好きで、蛇とネガティブが大嫌い。

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