アメリカの習慣

上司から部下への贈り物の習慣

木内裕也
PEGL[ぺグル] -実践ビジネス英語講座- 講師

日本では今でも、お中元やお歳暮の習慣が残っています。学校では生徒の親が先生に贈り物をしたり、また会社では部下が上司に贈り物をしたり。最近では贈り物をすることの適切さが問われたりして、お中元やお歳暮を送ることは少なくなっているかもしれません。

「アメリカにはお中元やお歳暮の文化はないのですか?」と聞かれることがあります。意外かもしれませんが、実はクリスマスなどとは別に、会社などの組織では年度末や年末に、それに似た贈り物の文化があります。しかしまずお中元などと違うのは、生徒の親と先生の様な関係では行われないこと(先生の間ではあるかもしれませんが)。そして、デパートの最上階などでお歳暮コーナーができていないこと。

この習慣では、上司が部下にちょっとした贈り物をしたり、組織のメンバーに組織の予算で贈り物がなされたりします。贈り物と言っても、1人当たり10ドルにもならないもの。実用的で、少しユーモアのある贈り物が好まれます。

例えば皆さんが10人のスタッフを持つ上司だとします。いつも眠そうにしているAさんには、大きな目覚まし時計。経理を担当しているBさんには、タブレットかと見間違えるサイズの電卓。休暇でどこかのビーチに行くCさんには、コストコサイズの日焼け止めクリーム。そんな風に、それぞれの個人にちょっとしたプレゼントをします。もしくは、組織のロゴが入ったチョコレートなどのことも。最近では、Zoom会議などで背景に置ける面白い置物が送られることも。

大切なのはどれだけ高価なものを買うかではなく、どれだけ個人に合ったギフトを送るか。上司が部下に対して、組織がそのスタッフに対して、「あなたを個人として認めています」というメッセージにもつながります。同時に、その個人の特徴などにあったギフトを送ることで、「あなたをただの労働者としてではなく、人として認めています」というメッセージにもつながります。

お中元やお歳暮とは違いますが、非常に面白い贈り物の文化です。


筆者:木内 裕也 PEGL[ぺグル]-実践ビジネス英語講座-講師
https://pegl.ohmae.ac.jp/lecturer/kiuchi
ミシガン州立大学アメリカ研究博士号取得。国際会議、企業間交渉、テレビ放送などでの同時通訳ならびに実務翻訳を中心に活動。バラック・オバマ元大統領の自伝、マイ・ドリームの翻訳者。アフリカ系アメリカ人の歴史と文化を学術専門分野としてデトロイトやボストンなどで研究を行う。ミシガン州立大学では、アメリカ研究、大衆文化の授業を担当。上智大学で通訳講座を担当した経歴も持つ。TOEIC、TOEFLで満点、英検1級など主要な英語資格検定で最高峰の記録を持つ。

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