アメリカの習慣

ファーストネーム?それとも苗字?

木内裕也
PEGL[ぺグル] -実践ビジネス英語講座- 講師

日本では苗字がよく使われます。先輩が後輩を呼び捨てにするときは苗字。後輩が先輩を呼ぶときは「佐藤先輩」のようにやはり苗字。会社でも「中根君」「原田部長」「西本さん」のように苗字が多いです。そして結婚式場に行けば「緒方家 佐々木家 結婚式場」です。家や組織を個人よりも重視する日本の文化が見えてきます。

アメリカでは、「あの人の苗字ってなんだっけ?」ということもあります。学校で友達はファーストネーム。同僚もファーストネーム。「先日Johnが話した通り」という発言があって、「ジョンって誰?」と思ったら社長だった、ということもよくあります。結婚式は必ずフルネームで書かれます。「Amy KlattとBob Jonesの結婚式」といった風です。

初めて会った人に、Good afternoon, Mrs. Wells.と言って、すぐにCall me Anne.のようにファーストネームで呼ぶように言われることも多いです。年齢や経験、肩書など上に立つ人は、なるべく下の人と同じレベルに自分を立たせて、平等さを強調することが望ましい、という暗黙の了解があります。その反面、社長と一般社員の報酬の差などは日本と比較にならないほどありますから、「平等さ」については見かけと現実には差があります。

フランスはまた違った状況です。日本語の「あなた」、英語のYouに当たる単語が2つあります。Vousは丁寧な「あなた」。Tuはカジュアルな「あなた」。学校の先生に生徒はVousで呼びますし、先生も生徒をVousで呼びます。友達同士はTu。まだ家族としか話をしないような子供たちは見知らぬ人と喋る経験が少ないので、他人をTuで呼んで親に注意されることも。出会ったばかりの人同士はVous。しかし時が過ぎると、「もうそろそろ、私たちTuで呼んでいいんじゃない?」という話になります。ここは暗黙の了解というより、実際に口に出してお互いの意思確認がなされます。早い段階からなるべくカジュアルになりたいアメリカとは差があります。

ビジネスの場では、フォーマルになりすぎていて「もっとカジュアルでいいよ」と言われる方が、その逆よりも望ましいです。アメリカ風のビジネスの行い方に慣れすぎて、フランスなどヨーロッパ諸国のビジネスを行うと、カジュアルすぎる人、という印象を持たれることもありますから、注意が必要です。


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筆者:木内 裕也 PEGL[ぺグル]-実践ビジネス英語講座-講師
https://pegl.ohmae.ac.jp/lecturer/kiuchi
ミシガン州立大学アメリカ研究博士号取得。国際会議、企業間交渉、テレビ放送などでの同時通訳ならびに実務翻訳を中心に活動。バラック・オバマ元大統領の自伝、マイ・ドリームの翻訳者。アフリカ系アメリカ人の歴史と文化を学術専門分野としてデトロイトやボストンなどで研究を行う。ミシガン州立大学では、アメリカ研究、大衆文化の授業を担当。上智大学で通訳講座を担当した経歴も持つ。TOEIC、TOEFLで満点、英検1級など主要な英語資格検定で最高峰の記録を持つ。

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