アメリカの習慣

ビジネススピーチ 日米の違い

木内裕也
PEGL[ぺグル] -実践ビジネス英語講座- 講師

 ちょっとしたスピーチをするときに、「ご紹介にあずかりましたXXです」というのは日本語の挨拶でよくあるセリフ。紹介はされても、再度自分できちんと名乗ることが礼儀正しいという考えは十分に理解できます。

 しかしこれを英語で行ってしまうと、失礼になることがあるのをご存じですか? この表現を英訳すること自体は難しくありません。もしくは、Good evening, ladies and gentlemen. I am XX.と名前をもう1度言うこともできるでしょう。

 しかしこんな風に、紹介されているのにもう1度名前を言うと、「名前の発音を間違えたから、修正しているんだ」と勘違いされてしまいます。英語でもJonathanとJonathonや、BrendanとBrandonのように発音が似た名前は多くあります。日本でも、佐藤さんと斎藤さんのような例がありますね。すると、紹介をしてくれた人に対して、「さっき『佐藤』と紹介されましたが、本当は『斎藤』です」というのも気が引けます。だから、あえてもう1度自己紹介をして、名前を修正する、ということはよくあります。

 そのため、自分で名前を繰り返してしまうと、司会者は「あ、間違えてしまったかな」と不安に思うでしょうし、聴衆は「別に司会者は間違っていなかったのに、なんで修正しているんだろう?」と思うでしょう。

 また、紹介をしてくれた人が日本の名前に慣れているとは限りません。一生懸命に発音を練習して、紹介をしてくれた可能性もあります。ですから、自分の名前を繰り返すことで、余計な心配や不安を司会者に与えてしまうことになります。

 しかし、紹介されていきなり挨拶の本題に入るのも気が引ける、という場合にはどうすればよろしいでしょうか? そんな時には、挨拶をしてくれたことに対して感謝の言葉を述べるのが良いとされています。

 つまり、Thank you very much for your kind introduction.(親切なご紹介をありがとうございます)のようなセリフがよく使われます。非常に便利な表現。定型文として丸暗記してしまってもよいでしょう。また、少しカジュアルな雰囲気であったり、仲間内の集まりであったりすると、I don’t know if I deserve all those kind words you just said about me.(身に余る紹介をしてくれて、ありがとうございます)など、少し冗談めかしてコメントをすることもあります。


筆者:木内 裕也 PEGL[ぺグル]-実践ビジネス英語講座-講師
https://pegl.ohmae.ac.jp/lecturer/kiuchi
ミシガン州立大学アメリカ研究博士号取得。国際会議、企業間交渉、テレビ放送などでの同時通訳ならびに実務翻訳を中心に活動。バラック・オバマ元大統領の自伝、マイ・ドリームの翻訳者。アフリカ系アメリカ人の歴史と文化を学術専門分野としてデトロイトやボストンなどで研究を行う。ミシガン州立大学では、アメリカ研究、大衆文化の授業を担当。上智大学で通訳講座を担当した経歴も持つ。TOEIC、TOEFLで満点、英検1級など主要な英語資格検定で最高峰の記録を持つ。

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