アメリカの習慣

座る場所

木内裕也
PEGL[ぺグル] -実践ビジネス英語講座- 講師

日本では「上座」や「下座」の概念が今でも根強く残っています。エレベーターの中でどこに立つか、会議室でどこに座るか、というビジネスの席から、飲み会でどこに座るかというところにまで、気を配る必要があります。特に「上座」や「下座」の概念がない文化の場合、どう対応するのが良いでしょうか?

ストレートに、「日本にはこんな文化があるので、是非こちらに座ってください」というのも1つの案ですが、その時に「なぜその席が上座とされているのか」を説明できると良いですね。「景色が見えるから」(You will get a better view of outside.)であったり、「エレベーターの操作盤から離れているから」(As a guest, you remain far from the control panel.)など、ちょっとした情報を加えるだけで文化理解につながります。

また、「上座」や「下座」を説明せずに、「こちらの椅子の方が座り心地が良いですから、どうぞ」(This chair is more comfortable.)のように勧めても良いです。すでに着席しているお客さんが下座の場合で、「上座」や「下座」があるんですよ、と説明しても「気にしないから大丈夫です」と言われたら、わざわざ席を替わってもらう必要はありません。

会議や集まりなどで、例えば体調がよくなくてお手洗いに行くかもしれないから出入り口の近くに座るとか、中座しなければならないから端に座る、ということはよくあります。また、部下たちに自由に議論をさせたい上司があえて部屋の後方で姿を隠すように座ることもあります。このように、立ち位置や座る位置を機能的に考えてみるのもの良いですね。

アメリカでは接待としてメジャーリーグの野球を見に行く、ということもあります。そんな時、お客さんには一番ゲームが見やすい位置に座ってもらう、といった気配りは欧米でもなされます。「ここが『上座』だから」というのではなく、「どうすれば一番喜んでもらえるか」を考えてみるのが良いですね。また、会議などでは「どうすれば一番活発な意見交換になるか」「どうすれば普段は議論できない人と議論する場を作れるか」などを考えて、着席順を先に決めることもあります。どうしても同じ部署の人や友達の近くに着席しがちですから、あえて着席位置を決めて、普段ではできない意見交換を促進させることも大切です。


木内裕也講師が担当する科目が含まれるPEGL[ぺグル]-実践ビジネス英語講座はこちら

中級コース(表現編)

ビジネスで伝わる表現力を強化したい方におすすめ!
https://pegl.ohmae.ac.jp/course/business_a/

中級コース(協働編)

ダイバーシティー時代の関係構築力を強化したい方におすすめ!
https://pegl.ohmae.ac.jp/course/business_b/

筆者:木内 裕也 PEGL[ぺグル]-実践ビジネス英語講座-講師
https://pegl.ohmae.ac.jp/lecturer/kiuchi
ミシガン州立大学アメリカ研究博士号取得。国際会議、企業間交渉、テレビ放送などでの同時通訳ならびに実務翻訳を中心に活動。バラック・オバマ元大統領の自伝、マイ・ドリームの翻訳者。アフリカ系アメリカ人の歴史と文化を学術専門分野としてデトロイトやボストンなどで研究を行う。ミシガン州立大学では、アメリカ研究、大衆文化の授業を担当。上智大学で通訳講座を担当した経歴も持つ。TOEIC、TOEFLで満点、英検1級など主要な英語資格検定で最高峰の記録を持つ。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事