アメリカの習慣

オフィスにある家族の写真に惑わされない

木内裕也
PEGL[ぺグル] -実践ビジネス英語講座- 講師

アメリカの映画やテレビ番組を見ていると、オフィスのシーンで机の上などに家族の写真が何枚も飾られているのを目にしたことがあるのではないでしょうか? そんなシーンを目にしていると、アメリカの人々は皆、ビジネスパートナーと家族の話をしたいんだ、と思い込んでしまうリスクがあります。その結果、会議やパーティーで初めて会った人に対して「結婚していますか?」「子供はいるんですか?」などと気軽に聞いてしまうことも。写真がオフィスに飾られているのとは正反対に、これは非常に失礼に当たります。

家族の話をするには、相手側からの話題の提供を待たなければいけません。例えば勤務先に新しい社員が入って、その人が写真を飾った場合、「楽しそうな写真ですね」と声をかけてみましょう。

It looks like a very fun vacation picture.
What a cute child!

などと声を掛けられます。しかし、「お子さんですか?」(Is that your son?) などのように思いこんではいけません。「楽しそうな写真ですね」と声をかけた後に、その返事として「はい、3歳と5歳の子供です」のように言ってもらえたら、「名前は?」などと聞いても大丈夫。それ以降は「お子さんたち元気?」などと聞いてもいいでしょう。

しかし家族構成が複雑な場合も。離婚して、隔週末でしか子供に会えないということもあります。配偶者と死別しているなどということもあるでしょう。したがって、家族の話をし始めても、思い込みは禁物です。

配偶者らしき人との写真があるからと言って、結婚しているとも限りません。また結婚に対して色々な考えもあります。Your husbandやYour wifeと言ったら、My partnerと返された場合、それ以降はYour partnerと表現することも大切です。もちろん、「子供はいるんですか?」「子供は作る予定ですか?」などと聞くのは礼儀違反。特に上司が部下に対してそのようなことを質問し、後日その部下が昇進の機会を逃した場合、「個人的な質問をされて、その答えが昇進の評価に加味された」と人事部に訴えられる、そして訴訟になることも考えられます。

一見、オフィスに家族の写真が飾ってあると、色々と質問できそうに思いがちですが、実際にはそうではないことを覚え、そして「何を話題にするか(例:家族構成を聞かない)」「どんな単語を使うか(例:家族構成を自分の思い込みで仮定しない)」にも気を払うことがとても大切です。


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筆者:木内 裕也 PEGL[ぺグル]-実践ビジネス英語講座-講師
https://pegl.ohmae.ac.jp/lecturer/kiuchi
ミシガン州立大学アメリカ研究博士号取得。国際会議、企業間交渉、テレビ放送などでの同時通訳ならびに実務翻訳を中心に活動。バラック・オバマ元大統領の自伝、マイ・ドリームの翻訳者。アフリカ系アメリカ人の歴史と文化を学術専門分野としてデトロイトやボストンなどで研究を行う。ミシガン州立大学では、アメリカ研究、大衆文化の授業を担当。上智大学で通訳講座を担当した経歴も持つ。TOEIC、TOEFLで満点、英検1級など主要な英語資格検定で最高峰の記録を持つ。

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