英語学習

AgencyとDistributorの違い

木内裕也
PEGL[ぺグル] -実践ビジネス英語講座- 講師

皆さんの職種では「代理店」という言葉をよく使うでしょうか? 貿易関係であったり、小売業であったりすると、比較的頻繁に使う表現ではないでしょうか? 「代理店」を英訳すると何でしょうか?

辞書を調べると、きっと最初に出てくるのはAgencyだと思います。日本のプロ野球からメジャーリーグを目指す選手が「代理人」を立てますが、その人をAgentと呼びます。芸能人にもAgentがいたりしますね。しかし、Agencyと「代理店」の意味には、少しずれがあります。それを理解するには、「代理店」の別の訳であるDistributorと一緒に考えてみると、その差が分かると思います。

Agencyは、「売り手と買い手の仲介をする人」です。前述の野球選手の例もそうですが、Agencyが何かを売るわけでも、買うわけでもありません。しかし、交渉が成立した暁には、手数料を数%などという感じでもらいます。土地や建物の売買でも、仲介業者が入る場合はAgencyですね。その仲介業者が何かを売るわけでも、買うわけでもありません。したがって、皆さんの仕事で「代理店」と言った時、その代理店が何かを売買しているかどうかがカギとなります。多くの場合、実は売買が存在していることがあるのではないでしょうか? そんな時にAgencyと言ってしまえば、売買関係は存在しないということになります。特に契約書などで間違えると、大きな問題になる可能性があります。

売買がある場合には、Distributorを「代理店」の訳として使うことが多いです。Distributorは売り手から何かを購入し、そこに不可価値を付けて、より高い金額で売ります。例えば海外から洋服を大量に輸入し(買っています)、日本向けにアクセサリーを付けて(付加価値)、国内のお客さんに販売する(売っています)のがDistributor。こう考えると、仕事の中身も、儲けの出し方も違うのが分かるでしょう。

Agencyは特に大きな資金力を持つ必要はありません。実際にはAgencyを使うビジネスから手数料を取れば資金力が大きくなるのですが、その資金力がなくてもAgencyになることはできるでしょう。しかし、Distributorはそもそも何かを買う必要がありますから、その資金力は必要になります。このように考えてみると、Distributorが「代理店」とだけ呼ばれるのではなく、「販売店」と呼ばれることが多いのも理解できるのではないでしょうか?

ニュアンスの違いなので、大きな違いはないように感じられますが、やはり契約書であったり、細かい点に注意が必要な文書などではこの使い分けが重要になります。


筆者:木内 裕也 PEGL[ぺグル]-実践ビジネス英語講座-講師
https://pegl.ohmae.ac.jp/lecturer/kiuchi
ミシガン州立大学アメリカ研究博士号取得。国際会議、企業間交渉、テレビ放送などでの同時通訳ならびに実務翻訳を中心に活動。バラック・オバマ元大統領の自伝、マイ・ドリームの翻訳者。アフリカ系アメリカ人の歴史と文化を学術専門分野としてデトロイトやボストンなどで研究を行う。ミシガン州立大学では、アメリカ研究、大衆文化の授業を担当。上智大学で通訳講座を担当した経歴も持つ。TOEIC、TOEFLで満点、英検1級など主要な英語資格検定で最高峰の記録を持つ。

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