ビジネス

仕事環境を整えるのはリーダーの役割のひとつ

木内裕也
PEGL[ぺグル] -実践ビジネス英語講座- 講師

コロナ以降、Work from homeで自宅から仕事をする人の数が増えています。自宅から仕事をすると仕事の効率が下がる、スタッフがさぼるのではないかなどという危惧もありましたが、多くのデータでは仕事はきちんとこなされています。効率が逆に上がったというデータもありますし、そうではなくても、仕事をこなすために従業員はきちんと仕事をしている、というデータも。Work from homeのできる環境、しにくい環境などいろいろ個人差があります。また、最近ではオフィスに週の数日は出勤して、残りの数日はリモートで働く、というHybridスタイルも多くなっています。

Hybridシステムであったり、またWork from homeを推奨したりすることは従業員の希望に叶った仕事環境を提供するうえで重要。しかし、同時にDiversityの観点から気を付けるべきこともあります。今回は、特にHybridを行う上で気を付けるべき点を1つ紹介します。

「毎日出社する必要はありません。しかし、毎日Work from homeも望ましくありません。なので、週に数日は出勤してください」と従業員に伝えたとします。そして「では週5日のうち、何日間出勤したいですか?」と質問されたら、皆さんなら、どう答えるでしょうか? アメリカでのデータですが、白人はそれ以外のマイノリティーと比較して、出勤希望日を多く言います。男性は女性より多い希望日数を言います。逆に言えば、マイノリティーはより多くの日数を自宅で仕事をしたいと思っていることになります。

この理由を探ってみると、例えば人種的なマイノリティーは、保育施設が近くになかったり、親を介護していたりという「自宅で仕事をすることによる恩恵」をより強く感じていることが見えてきます。そして男女平等が日本よりは進んでいるといわれているアメリカでも、女性のほうが男性より育児や介護のプレッシャーを感じています。したがって、自宅で仕事をこなしたい、という回答につながるのです。

このような環境の中で、実際にオフィスに出社した人がリモートで働く人よりも出世などの機会をより多く受けたとしたらどうなるでしょうか? 「リモートではなく出勤しているから勤勉」という評価があるのかもしれませんし、もしかすると顔を見合わせているから一層の人間関係が生まれて、そこから何かの機会を得るのかもしれません。個人に悪意はないでしょう。しかしこのような状況が進めば、そもそも出世などの機会が少ない人々が、一層機会を失うことにつながります。
 Diversityを推奨する、という観点からHybridなどを認める風潮があるのは良いこと。しかし思わぬ悪影響も生まれてしまいます。そこをきちんとケアして、仕事環境を整えるのがリーダーとしては大切でしょう。


筆者:木内 裕也 PEGL[ぺグル]-実践ビジネス英語講座-講師
https://pegl.ohmae.ac.jp/lecturer/kiuchi
ミシガン州立大学アメリカ研究博士号取得。国際会議、企業間交渉、テレビ放送などでの同時通訳ならびに実務翻訳を中心に活動。バラック・オバマ元大統領の自伝、マイ・ドリームの翻訳者。アフリカ系アメリカ人の歴史と文化を学術専門分野としてデトロイトやボストンなどで研究を行う。ミシガン州立大学では、アメリカ研究、大衆文化の授業を担当。上智大学で通訳講座を担当した経歴も持つ。TOEIC、TOEFLで満点、英検1級など主要な英語資格検定で最高峰の記録を持つ。

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