ビジネス

話をしやすい印象を部下に与えるコツ1

木内裕也
PEGL[ぺグル] -実践ビジネス英語講座- 講師

以前のコラムで、文化によっては「偉そうにしない」「気さくに話ができる」上司像がとても重要視されることがあると書きました。「威厳を持つことが大切」ということもありますが、威厳を持ちながらも気さくな関係を部下と構築できる人に大きな価値があります。

かつてはそんな上司の特徴として、いつでもオフィスのドアが開いている、ということがありました。ある程度の肩書を持つと個人のオフィスを持つのが多いアメリカなどでは、オフィスのドアを開けたままにしておくか、それとも閉めておくか、大きなテーマとなります。大切な会議をしていたり、集中して仕事をしているときなどは、オフィスのドアを閉めるでしょう。しかし例えば書類に目を通しているだけなどという時、皆さんであればオフィスのドアを開けたままにしますか? それとも閉めるでしょうか? プライバシーを考えて閉める人もいるかもしれませんし、知らない間に誰かに見られているのは嫌、という理由で閉める人もいるかもしれません。

しかしOpen door policyという言葉もある通り、意識的にドアを開けたままにしておく人は少なくありません。これには象徴的な意味がまずあります。ドアが多くの場合開いているということで、組織の透明性を示すこと。「密室で何かを決めているわけではないですよ」「何も隠していないですよ」というメッセージにつながります。

部下が上司の仕事を評価することもある企業では、「ドアが常に開いている」ことで話をしやすい上司、という評価にもつながります。様々な企業で「皆さんの部署や企業の文化を1つ変えられるとしたら、どうしますか?」と聞くと、「自由に意見を言える環境にしたい」「年齢や肩書に関係なくモノが言える環境にしたい」「自由に質問ができる環境にしたい」という意見がよく出されます。オフィスのドアを開けておくだけで、部下が「話をしたければ、いつでも話かけてもいいんだ」と感じることができます。

時には「いろいろ口で言うのではなく、行動で示せば良い」「上に立つものは、とにかく組織を牽引すればよい」というやや古風な考えを持つ上司も少なくはありません。しかし、多くのグローバルビジネスにおいては、威厳と気さくさのバランスを上手に取れることが大切とされています。飲み会の席だけの「無礼講」ではなく、仕事の場でもお互いを尊重しながらいかに意見を交換できる環境を作るか、上司の手腕にかかっているでしょう。


筆者:木内 裕也 PEGL[ぺグル]-実践ビジネス英語講座-講師
https://pegl.ohmae.ac.jp/lecturer/kiuchi
ミシガン州立大学アメリカ研究博士号取得。国際会議、企業間交渉、テレビ放送などでの同時通訳ならびに実務翻訳を中心に活動。バラック・オバマ元大統領の自伝、マイ・ドリームの翻訳者。アフリカ系アメリカ人の歴史と文化を学術専門分野としてデトロイトやボストンなどで研究を行う。ミシガン州立大学では、アメリカ研究、大衆文化の授業を担当。上智大学で通訳講座を担当した経歴も持つ。TOEIC、TOEFLで満点、英検1級など主要な英語資格検定で最高峰の記録を持つ。

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