ビジネス

机の置き方

木内裕也
PEGL[ぺグル] -実践ビジネス英語講座- 講師

ドラマなどで「社長室」は大きな机の向こうに社長が座っている様子をよく目にします。実際、組織の偉い人達が大きな机の向こう側に座っている様子を見かけることもあるでしょう。場合によっては、「社長挨拶」などのインターネットページにそんな社長の姿の写真が出ていることも。確かに大きな机の向こうに座っていると、「社長のオーラ」が伝わってくるようでもあります。

例えば社長と社員を比べたら、そこに力関係が明らかに存在します。否定のしようはありません。しかし、現実にある力関係をそのままに示すことを良しとする文化と、そうではない文化があります。例えば、アメリカとイギリスを比較した場合、イギリスは「否定のしようがない現実なんだから、あえてそれを隠す必要はない」としたりします。もちろん、上に立つものがその力を見せびらかすのは良く思われません。しかし、アメリカと比較すると、イギリスでは上下関係を隠そうとする努力は非常に限られています。

例えば日本を考えてみてください。たった数か月早く生まれたというだけで、学年が1つ違うと、「先輩」「後輩」になります。言葉遣いにも気を付けなければなりません。これは学校生活だけではなく、会社に入っても同じ。「〇〇部長」と肩書を気にします。

それに対して、アメリカではなるべく上下関係に言及しないようにしようという努力があります。The other day, John mentioned that ….(先日、ジョンが言ってたんだけど)と言われて、「Johnって誰?」と思ったら社長だった、というようなことはよくあります。部下が初めて会った上司にMr.やMs.を付けて呼ぶと、Just call me Katy.(Katyと呼んで)ということも。大学の教員ですら、学生にファーストネームで呼んでほしい、という人もいるほどです。

そんな習慣では、机の置き方も大切。大きな机を挟んで話をすると、上下関係は崩れませんし、壁を取り払うことはできません。大きな部屋であれば、机とは別に応接セットを置くこともできるでしょう。アメリカのホワイトハウスにある、大統領執務室の写真を見たことのある人も多いと思います。大きな机とは別に、話し合いができる応接セットがあります。

部屋が小さい場合、あえて机を壁に向けて置くこともなされます。机に座ったとき、部屋の入り口が見えるのは便利ですが、話し相手との間に机があります。しかし、机を壁に沿って配置することによって、椅子を回転させれば、机を挟まずに部下や同僚と話ができるのです。

「偉そうにしない」「気さくに話ができる」という要素が、部下が上司を評価するときに大切とされます。上に立った人も、部下から自分がどう思われているのか、気にしながら机の配置に気を使っていることもあります。


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筆者:木内 裕也 PEGL[ぺグル]-実践ビジネス英語講座-講師
https://pegl.ohmae.ac.jp/lecturer/kiuchi
ミシガン州立大学アメリカ研究博士号取得。国際会議、企業間交渉、テレビ放送などでの同時通訳ならびに実務翻訳を中心に活動。バラック・オバマ元大統領の自伝、マイ・ドリームの翻訳者。アフリカ系アメリカ人の歴史と文化を学術専門分野としてデトロイトやボストンなどで研究を行う。ミシガン州立大学では、アメリカ研究、大衆文化の授業を担当。上智大学で通訳講座を担当した経歴も持つ。TOEIC、TOEFLで満点、英検1級など主要な英語資格検定で最高峰の記録を持つ。

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